第2回  KPBライブトーク

 公園の使い方をリノベーションしていく!市民公園のリニューアルに向けて

これからの公園の可能性についてさまざまなゲストと議論していく「KPBライブトーク」。2021年3月末の『KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE(通称:KPB)』オープンに向けて、建設現場から9回にわたって配信していきます。第2回は、民間の立場からリニューアルやリノベーションに携わっている2人のゲストに、各務原市の市民公園のこれからについて話を聞きました。

【 メンバー紹介 】

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今日は「公園の使い方をリノベーションしていく!市民公園のリニューアルに向けて」というテーマでお話をしていきます。では、現場にいるゲストより自己紹介をお願いします。

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設計事務所をやっている大前です。各務原市では空き家の有効活用や公園の民間活用などで関わっていまして、市民公園リニューアルの基本計画にも携わっています。今日は長縄さんのお声がけもあり、寒いところにいます(笑)。

ライブトーク会場であるKPBの建設現場(2020年12月25日撮影)

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現場は大変寒いです(笑)。では、オンラインのゲストからも自己紹介お願いします。

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岐阜大学の出村と申します。現在は工学部にいますが、来年度からは社会システム経営学環というところで経営を教えます。

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出村先生はどのような形で市民公園に関わっていらっしゃるのでしょうか?

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去年、各務原市の市民公園リニューアルに向けての基本構想を作る委員会が立ち上がった際に、委員長をやらせていただきました。有識者や住民の方々と非常に前向きで有意義な議論をしながら、基本構想を作り上げていきました。

老朽化が進む市民公園。リニューアルの背景  

市民公園の芝生広場

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そもそも、公園をリニューアルしていくためには、どういうステップを踏むことになるのでしょうか?

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公園は公共の資産なので行政が管理することになります。まずは基本構想を作って関わる人たちの合意を得て、次に基本計画を作ります。そこである程度の配置や使い方などがはっきりした上で設計に入ります。通常は早くて1~2年といった期間で進めるものですね。

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各務原市でも市民公園リニューアルの基本計画を作るところまで来ていますが、コロナの影響で保留になっています。今回のトークの大前提として、僕ら民間の立場として、これから市民公園がどうなっていくかについて細かい話まではできませんので、そのあたりは予めご了承ください。

私たちが今話している場所の北には学びの森、南には市民公園があります。その市民公園に関する基本計画が作られたということなんですけど、実際、今の市民公園はどういう状態になっているんでしょうか?

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公園自体が完成してから30年以上経って老朽化が進んでいます。あちこちのタイルが割れていたり、木が成長しすぎていたりして、薄暗くて近づきにくい雰囲気が出てしまっていますね。広い空間を十分に活用できていないのではないかという場所も見受けられます。

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市民公園の北側は図書館や遊具、噴水があったりしますけど、南側は散歩以外にあまり使われていないのが現状ですよね。

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すり鉢状のステージになっている場所もあって、そこをもっと活かせられたらいいのになと思っているんですが、あの場所があることを知らない人もいるんじゃないですかね。

市民へのアンケート、回答は810件!  

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市民公園としてもうちょっとやれることがあるというか、もったいない部分があるし、時が経って疲れてきている部分もあるという感じでしょうか?

全国的に公園だけではなくて道路とか市役所とかそういったものの建て替えのタイミングが重なっていると思うんですけど、新しいリニューアルの前例や傾向というのはあるんでしょうか?

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そうですね、リニューアルはあちこちで行われています。特に最近は流れが変わってきまして、2007年に「都市公園法」が改正されて、公園の整備や改修、運営に民間の活力を使う「Park-PFI※(以下P-PFI)」ができるようになってきたんですね。

公園の中にものを新しく作ることを民間と共同で構想し、民間が責任を持ってお金を出し、自由に使ってもらうということを積極的に進められるようになりました。全国的にこの仕組みを使って公園をリニューアルしようという動きが高まっています。

※「Park-PFI(公募設置管理制度)とは
都市公園における民間の力を活用した整備・管理手法のことで、公園の利用者にとってより快適な空間となるよう、公園内の環境整備から管理まで一体的に行う事業者を公募により選定する制度。

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なるほど。全国的にP-PFIの機運が高まっているわけですね。

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有名なところだと、名古屋の「久屋大通公園」でもP-PFIが活用されています。そういった大きなプロジェクトにも有効な方法になっていると思います。まさに大前さんと長縄さんが今いらっしゃるKPBも完全に民間の活用になりますよね。

公園を使う市民が主体となって仕掛けていく点が新しい動きとしてあります。その中でも特に各務原市の市民公園は、“公園を日々使う人を中心に考えよう”というスタンスで話し合いをした点で、先進的だと感じています。

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そうなんですね。「パークリノベミーティング※」という言葉は大前さんの方で考えられたのですか?

※「パークリノベミーティング」とは
各務原市の市民公園でやりたいことをそれぞれの人が気軽に話し合うオープンな場。2019年12月に始まりました。

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市民公園の基本計画を作る中で、市民の方をどう巻き込むかを議論していまして。広く市民の方が参加できて、かつそれを継続できるような会議になったらいいなということで、 公園のリニューアルではなくリノベーションだ というようにとらえて、「パークリノベミーティング」という名称になりました。

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この基本計画を策定していく上で、このパークリノベミーティングが計何回行われたんでしたっけ?

( ガヤガヤ )

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関連するものを合わせると8回行っていますね。ほんとにミーティングでのリアクションがすごくて、一番びっくりしたのは、今後の公園利用に関するアンケートの回答が810件も来たことでした。

みんな公園に興味があるんだというところからミーティングが始まって。色んな方が「公園でこんなことがしたい」という意見を持ち寄って、それを社会実験として試しながら基本計画を作るイメージだったんですよね。

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そうですね。構想では最後にみんながやりたいことを持ち寄って実践するのが総括点だったんですけど、コロナの関係でできなくなってしまって。瀬戸際までいっていたんですけどね。

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パークリノベミーティングでいろいろな意見があった中で一番印象に残っているのが、名古屋から来られたご家族なんですけど。

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あれは良かったですよね。「名古屋でそういうのがあったらいいな」って調べてたらたまたま見つけて、わざわざ各務原市まで来ていただいて。

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そのご家族のお母さんが「各務原市ならやれると思った」ということを仰っていたんですね。各務原市のゆるさとか自由度がそう思わせたのかはわからないんですけど(笑)。市民公園のリニューアルをそこまで期待してくれる人がいたのはすごい嬉しいですよね。

実際、市民公園をリニューアルする上で、大事な点というか、押さえておくべきポイントといったことはありますでしょうか?

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もっとも重要なことは、パークリノベミーティングのような、 本当に公園を使いたい人の気持ちがつながっていくように進めていくこと だと思っています。今はコロナでストップしていて、気持ちが冷えているかもしれないですけど、コロナが終息して「よし工事だ」とするよりも、そういった使う人たちの気持ちを再度高めて、「その人たちがどうしたいか」を中心に組み立てていく必要があると思います。

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やっぱり“人ありき”ということですよね。使う人たちの熱量や想い、使うイメージみたいなものがあって、公園はその受け皿ですもんね。

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そうですね。どうしても今までの公園の作り方だと、形を整えることに終始してしまう傾向にあるんですね。そうした中でしっかりステップを踏んで、委員会としてもそれを良しとして進めることができていた各務原市のやり方は、ある意味完璧だったと思います。なので、これを機に元に戻してはいけないと思っています。

図書館が起点となって、まちが変わっていく?

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市民公園の基本計画の特徴などについて話しましょうか。

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そもそも、現状の公園って、真ん中に大きな芝生広場があって、4つ角に噴水やステージがあるんですけど、それぞれ独立しているのが課題かなと思います。関係性を作りづらいというのは1つの課題です。それと、公園の中に市民図書館があるというのは大きな特徴なので活かしていきたいですね。

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現状では図書館と公園が分断されていて、本来は境界線が曖昧だといいんですが。図書館の入り口が狭くて、閉ざされている感じはありますよね。各エリアの特徴は活かしつつ、芝生広場を中心につながっていくといいですよね

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芝生の周りにある歩道の形を工夫して、場所同士の関係を作ったり、小さなエリアが連続しているような構図を作ってあげるといいですよね。

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出村先生からも、基本計画の特徴についてお話いただけると嬉しいです。

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もともとあるものはできるだけ活かそうという計画ですね。4つ角にある広場の存在感が強すぎて、人を寄せつけない現状はあると思います。

先ほど大前さんがおっしゃったように、まさにリニューアルではなくリノベーションなんですよね。公園のデザインとして1つ1つがきめ細かく、公園の利用者がどういう体験をするかがイメージされた計画かなと思います。

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今回の市民公園のリノベーションの中で、「どういう人がここに来て、何をするか」というのが考えられている点と、隣接する学びの森公園に対して市民公園のポジショニング、そして市民公園の中にもさらに細分化されたポジショニングがあるという点がおもしろいなと思います。

民間側で思い描く「市民公園がこうなったらいいな」という未来のお話を伺いたいです。

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図書館の前でゆったり本を読んだりコーヒーを飲んだりして過ごせる空間を作れたらいいなと思います。

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図書館が公園にはみ出るというやり方はあるんでしょうか?

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実は図書館と公園って世界的な課題で。ロンドンの真ん中にある「ハイドパーク」という大きな公園があるんですけど、そこで「公園の中に図書館を作るならどういうものがいいか」というコンペが開催されたんです。そのコンペの1等賞の案は「まるで外のような内部空間」だったんですね。つまり、外で図書館を開くということに抵抗を感じているから出てきた案ではないかなと。やってはいけないという強迫感もあるのかもしれません。

図書館の本は貸出している以上、どこに持って行ってもいいはずなんですよね。本は読んでなんぼだと思います。本を建物の外にいかに引っ張り出すかというのはチャレンジングだし、非日常的な空間になるのではと思います。

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電子書籍も多くなってきて、リアルな本の意味合いがどうなっていくかという時代じゃないですか。だからこそ、図書館が紙の本を通じてどんな場を作るか、というのを実験して欲しいなと思います。

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図書館は単なる本の貸し借りだけではなくて、本を使ってまちの人や暮らしにどう関わっていけるかだと思います。本の意味もリノベーションしていかないといけないんですかね。司書さんのこれからの仕事は変わっていかないといけないんだろうなとも思います。

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図書館はまちを変えるという役割を果たせると思います。「ぎふメディアコスモス」(岐阜市立図書館を含んだ複合文化施設)もそうですが、図書館が起点になってまちがおもしろくなっているという事例はあると思います。

巻き起こせ!パークレボリューション

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コロナ禍になって公共空間のあり方は変わってきているでしょうか?

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今の時代、より公園が必要とされていますよね。これからの時代を作っていく中で、各務原市にとっては“公園と図書館”だなと思います。

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大前さんはいかがでしょうか?それこそお子さんとの関わり方、過ごし方という面でもいかがでしょうか?

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誰もが公園に行きやすくて、公園をきっかけに何かがある、そんな状態になっていくといいなと思います。「やりたいこと」「実現したいこと」というポジティブなことを持ち寄れる場になるといいなと思います。

今まではルールや規制することが増えていたと思いますが、そうではなく、「こういうことやっていいんだよ」という、“自由にすることがみんなをハッピーにする”という方向に持って行きたいですね。

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それこそ個人レベルというか雑談なんですが、個人的に「公園でこんなことしたいよ」みたいなことありますか?

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うまいもん食いたいですよね!

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食いたいですよね(笑)。食べるって、すごく大事なことですよね。公園の滞在時間も長くなるのでいいことですよね。

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公園で思わぬ出会いがあるといいなあと思います。もう1つは、大人になってからの体験ですけど、イギリスで公園がリニューアルしたときに、鉄板を貼った芝生の上でユンボ(ショベルカー)とダンサーが躍るというのがあって。非日常感がすごかったですね(笑)。

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ユンボが公園に現れたら、非日常ですね(笑)。やっぱり、公園って本来は自由なんですよね。 「公園ってこういうことしちゃいけないのかな」と使う側がルールを作ってしまっている点は少なからずあると思います。

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自由を獲得するために、ちゃんと公園を運営する力が必要だと思います。そうすれば安心して自由な展開ができそうです。

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「おもしろいことを与えられるんじゃなくて、自分で作れるんだよ」というのがいい ですよね。公園がそういう場になるといいなと思います。

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与えられるんじゃない、掴み取るんだ。パークレボリューションですね!!

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誰かが正解をくれるわけじゃなくて、自分でやりたいことをDIYするというか、そういう作っていくという感覚は必要ですよね。

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変な話、公園の“YES”、正しい使い方はないと。自分たちで提案して作っていくということですよね。大前さん、綺麗な落としどころでしたね!(笑)。というわけで、公園の正しい使い方というものはなくて、自分たちで使っていこう、そしてその受け皿に市民公園がなっていければいいなと思います。


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